岡山県南部の灘崎町(現・岡山市南区)出身の漫画家・岩本ナオ。地元への愛着が創作の根底にあり、身近な地域を舞台にした作品を多く発表しています。小学館の『月刊フラワーズ』を主な連載誌とし、少女漫画の枠にとどまらない多様なテーマに取り組んでいます。2009年には『
町でうわさの天狗の子』でブロスコミックアワード大賞、翌年に小学館漫画賞少女向け部門を受賞するなど、早期から創作力が認められました。「知っている土地のことしか書けない」と以前は語っていましたが、近年は海外の取材を重ねてファンタジー作品にも挑戦するなど、作家としての表現の幅を広げています。
『
町でうわさの天狗の子』は、天狗の信仰が根付いた架空の町を舞台に、天狗と人間のハーフである主人公が、修行義務と恋心の間で揺れ動く姿を描いた長編。民俗文化と青春の葛藤を融合させた独特の世界観が特徴です。『
金の国 水の国』は二つの隣国を題材にした異色ファンタジーで、政略結婚から始まる予想外の物語展開が評価され、各賞で高順位を獲得。劇場アニメ化も実現しました。『
マロニエ王国の七人の騎士』はスペインの風景に取材した壮大なファンタジー長編で、テレビアニメ化も予定されています。一方『
雨無村役場産業課兼観光係』は現代の地方創生を背景にした実話的作品。全作を通じて、岩本ナオは細部まで丹念に人物心理を描き、地域や文化への向き合い方を深掘りする姿勢が一貫しています。
岩本ナオの作品は刊行形態が多様なため、読む順序を工夫するとより楽しめます。入門としては、独立した一編として完結する『
金の国 水の国』がおすすめ。短編ながら構成の完成度が高く、この作家の魅力を凝縮したほぼ完結版です。次に『
町でうわさの天狗の子』で長編ストーリーの世界観に浸るのが良いでしょう。全12巻で完結済みなので最後まで一気読みできます。現在は『
マロニエ王国の七人の騎士』が小学館『月刊フラワーズ』で連載中(11巻刊行済み)で、継続的に新刊が出ています。地方や田舎の風景に惹かれる読者なら『
雨無村役場産業課兼観光係』の3巻完結版も手に取る価値があります。