渡航は千葉県出身の兼業作家で、昼間は会社員として働きながら夜間に執筆活動を行っています。2009年、明治大学を卒業後に第3回小学館ライトノベル大賞でガガガ大賞を受賞した『あやかしがたり』でデビュー。審査員から「構成・考証ともにしっかりしており、文章も破綻がなく、鋭い一文を繰り出す筆力がある」と評されるなど、デビュー時から高い完成度が認められていました。高校時代は部活をしておらず、地味で友人も少なかったという本人の述べた経歴が、後の作品に深く影響しています。就職活動での失敗を契機にライトノベル作家を志し、現在も兼業での執筆を継続。同業者のさがら総・橘公司とSpeakeasyというユニットを組んでいるほか、声優の江口拓也・堀井茶渡とも交流があります。
渡航の代表作『
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は、2011年の発表以来、シリーズ全体で圧倒的な支持を集めています。本作は孤立気味の主人公が、校内奉仕クラブで2人のヒロインと関わりながら成長していくストーリー。一見すると恋愛ラブコメですが、深層には青春期の複雑さ・人間関係の葛藤・自分らしさの模索といった普遍的なテーマが組み込まれており、単なる娯楽作品を超えた心理描写の豊かさが特徴です。また『ガーリッシュナンバー』は、アニメ業界を舞台にした作品で、キャラクターたちの思惑や業界の現実をシニカルに描いています。共著『クズと金貨のクオリディア』では、複数の視点から物語を紡ぎ出す構成を採用。渡航作品全般を通じて、繊細な心理描写と現代性を兼ね備えた緻密なストーリー構成が一貫していることが、2013~2015年のオリコン年間著作者ランキングで高位置をキープした理由と言えます。
渡航の入門作として、『
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』を最初から読むことを推奨します。本編全22巻は完結済みで、関連作『
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。-妄言録-』(スピンオフ・副読本)も多数刊行されています。アニメ化は全3期で完結済み(2013年、2015年、2020年放送)であり、映像化作品との相互補完も可能です。より幅広い世界観を体験したい場合は、『ガーリッシュナンバー』(3巻完結)で業界批評的な作品世界へ。さがら総との共著『クズと金貨のクオリディア』は、渡航の協業側面を知るうえで参考になります。現在、大手出版社のガガガ文庫から刊行されており、新刊・既刊ともに入手性は良好です。