漆原友紀は山口県出身の漫画家で、1999年に『月刊アフタヌーン』の増刊号でデビュー作『
蟲師』の連載を開始しました。デビュー作がそのまま代表作となるほど、創作の初期段階で完成度の高い世界観を確立した作家です。作品には別ペンネーム・志摩冬青での執筆もあり、複数の視点から創作活動を展開しています。『
蟲師』は1999年から2008年にかけて『月刊アフタヌーン』で隔月連載され、2007年時点で累計350万部を突破するなど、多くの読者に支持された作品です。妖怪に似た謎の生命体「蟲」と、それに対峙する専門家「蟲師」という独自の設定を生み出し、日本の漫画文化に新しい境地を切り開きました。
『
蟲師』は、蟲師のギンコが様々な蟲によって引き起こされる現象に対峙する物語で、漆原の代表作にして最高傑作です。時代設定は「鎖国を続けた日本」もしくは「江戸期と明治期の間の架空の時代」で、ノスタルジックな日本の農村風景を舞台としています。登場人物の和装や中山間地を思わせる風景描写が、作品全体に深い歴史性と神秘性をもたらしています。『
蟲師』以降の作品『
水域』(2010年連載)では、深山ダムの渇水と夢の中で繰り広げられる不思議な世界を描き、幻想的なテーマを探求しています。漆原の作風は、日本の民俗的・伝統的な美学を背景に、超自然的な現象を冷静に観察する視点が特徴です。妖怪譚とも異なる「蟲」という設定は、既存の怪談・妖怪漫画の枠を超えた、独創的な表現となっています。
漆原作品の入門は『
蟲師』から始めるのが最適です。全10巻で完結しており、講談社から複数の版(通常版・愛蔵版など)が刊行されているため、入手しやすくなっています。2013年には特別篇「日蝕む翳」が『月刊アフタヌーン』に前後篇で連載され、単行本化もされており、『
蟲師』の本編を読み終えた後の追加資料として機能します。『
水域』は2010年の連載作で、こちらも完結済みの全2巻。通常版の他、愛蔵版(2011年)、新装版KC デラックス版(2018年)が刊行されています。現在は『
猫が西向きゃ』や『
フィラメント』など新作も連載中です。漆原の作品は『月刊アフタヌーン』(
講談社)という雑誌の看板作家としての位置付けが強く、同誌で長く読みつがれています。