高野文子は1957年新潟県出身の漫画家・イラストレーター。1979年に『JUNE』で「絶対安全剃刀」を発表し、看護師として働きながらの商業誌デビューを果たします。当時、大友克洋やさべあのまらと並び、漫画界の「ニューウェーブ」の旗手として注目されました。従来の少女漫画や少年・青年漫画の枠組みにはまらない、独特の表現世界が高く評価されています。デビュー後30年で単行本わずか7冊という極めて寡作なスタイルを貫いており、一作ごとの密度の濃さが特徴です。夫はフリー編集者の秋山協一郎で、大友克洋の作品刊行にも関わった人物です。
最初の連載作『
ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』(1986〜1987年)は、デパート好きな少女がスパイを相手に冒険するコメディで、アガサ・クリスティやヒッチコック映画から着想を得た多彩な構図・コマ運びが特徴です。短編集『
棒がいっぽん』(1995年)は1987〜1994年の6作品を収録した、短編集としては12年ぶりの出版となりました。『
黄色い本』は電子版で人気を集めています。高野の作風を貫くのは、強弱のない単純な線描と独特な映画的演出、一読では理解しがたい心理描写です。一見シンプルながら、奥行きのある人間関係や不可思議な状況設定が読み手を引き込みます。
入門には『
ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』がお勧めです。映画的な楽しさがありながら、高野独特の感覚世界への導入として最適です。次に短編集『
棒がいっぽん』で、様々なバリエーションを持つ作品群を経験するのが良いでしょう。最新作『
黄色い本』は電子版で手軽に読めます。高野は寡作ゆえに新刊刊行の間隔が長く、過去作が品切れになることもありますが、主要作品は復刊や電子版で読める環境が整いつつあります。絵柄や展開の理解には初読では戸惑うこともありますが、その独特さこそが高野文子の最大の魅力です。