埼玉県出身の漫画家・高尾滋は、1975年生まれ。白泉社の『花とゆめ』を主な連載先として、2000年代初頭からキャリアをスタートさせました。デビュー作『
てるてる×少年』(2001~2004年連載)では、学園コメディから旧家の秘密へと物語の重心を移すという大胆な構成を試みています。その後も『
ゴールデン・デイズ』『
いっしょにねようよ』『
マダム・プティ』など、多くの作品で時間軸の遡行や非現実的な設定を活用しながら、登場人物の内面世界を丁寧に描いてきました。少女漫画というジャンルの中でも、心理描写の深さと物語構成の実験性において、独自の立場を貫く作家として知られています。
『
ゴールデン・デイズ』は、過保護な母とのトラウマを抱える男子高校生が、曾祖父との関係を通じてバイオリンと向き合い直す物語。世代を超えた悔やみと再生というテーマが、静寂と音が織り成す表現で描かれます。『
いっしょにねようよ』は、家を出奔した少女が、お面を被った霊視能力者たちとの奇妙な同居生活に身を置く異空間ファンタジー。『
マダム・プティ』は1920年代のオリエント急行を舞台にした歴史ロマンで、高尾の作風では珍しい明確な冒険譚です。『
人形芝居』は未来世界で子型アンドロイドと人間の関係を描くSF群像劇。共通する特徴として、主人公が既存の日常から外部へ移動する「非日常への侵入」、複数のレイヤーを持つ心理描写、そして絵柄の繊細さが挙げられます。
高尾滋の入門作としては『
てるてる×少年』が最適です。学園生活というなじみやすい舞台から、徐々に秘密と恋愛へシフトしていく構成が、作家の特性を理解するうえで有効です。心理描写の深さから入りたい場合は『
ゴールデン・デイズ』がお勧めです。多くの代表作が白泉社『花とゆめ』連載で、現在も単行本で入手しやすい環境にあります。『
ゴールデン・デイズ』『
いっしょにねようよ』『
てるてる×少年』は完結済み。『
マダム・プティ』は全11巻で完結、『
人形芝居』は4巻まで刊行され不定期連載中です。時系列よりも、その時々の気分に応じて選ぶのが、作家の多彩な作風を楽しむコツといえるでしょう。