水玉螢之丞は、1959年埼玉県出身の女性イラストレーター・漫画家です。漫画家の岡部冬彦を父に持ち、作家・軍事評論家の岡部いさくを兄に、漫画家のおかべりかを姉に持つ、創作一家で育ちました。専門学校中退後、音楽雑誌でのコラムやイラスト制作を経て、編集者の大森望によってSFファンであることを見出され、『SFマガジン』での活動へと導かれます。以降、くっきりした描線とポップな表現で知られるイラストレーターとして、主にSF小説の挿絵を手がけました。星雲賞アート部門を複数受賞し、SFファンダムでの影響力は大きく、「いさましいちびのイラストレーター」と自称するその姿勢は、多くの読者に愛されました。釣りを趣味とし、Twitterでも活動を続けていました。2014年12月、55歳で逝去。
水玉の代表作は『
まおゆう魔王勇者』で、膨大なレビューを集めています。本作は勇者が魔王の城へ乗り込む冒頭から、意外な展開へと反転する、新奇なファンタジー作品です。緻密な世界観と経済・政治的な深みを備えながらも、キャラクターの表情やアクションはポップで親しみやすく、硬質なテーマと軽妙な表現のバランスが特徴です。水玉のイラストレーターとしての経験が反映された、躍動感あふれる絵柄は、複雑な設定世界を視覚的に引き立てています。外伝『まどろみの女魔法使い』も同じ世界観での作品で、キャラクター掘り下げを得意とする水玉らしさが光ります。『すごいぞ!おかあさん』など、コミカルなコラム的作品も手がけており、多様な表現領域での活動を示しています。
水玉螢之丞の作品を知るなら、まずは圧倒的なレビュー数を持つ『
まおゆう魔王勇者』から始めるのがおすすめです。ファンタジー初心者でも入りやすい「勇者vs魔王」という設定でありながら、読み進むにつれ予想外の奥行きが明かされていく構成は、水玉の創作センスを最も体現しています。現在も連載中の同シリーズの続巻が刊行されており、新たに手に取ることができます。より深く作家を理解したい場合は、没後の2018年に開催された「水玉螢之丞おしごといろいろ展」の記録を参照することで、イラストレーターとしての仕事ぶりや人となりを知ることができます。多くの代表作が継続中の刊行状況にあるため、シリーズを追いながら作家の軌跡をたどることが可能です。