狩撫麻礼(1947-2018)は、複数のペンネームを使い分けた劇画の原作者です。ひじかた憂峰はその中の一つであり、最も知られた筆名の一つとなりました。青年期に黒人音楽やレゲエに強く影響を受け、これが創作の根底にあります。ペンネーム自体もジャマイカとボブ・マーレーに由来するなど、音楽への執着が垣間見えます。劇画村塾の出身で、いしかわじゅんや山本貴嗣といった同期の作家との交流が深かったほか、江口寿史との合作経験もあります。パーティー嫌いながら人脈が豊かという矛盾を持ち、その独特のキャラクターは同業者からも注目される存在でした。2018年1月に他界しましたが、生前に残した原稿により作品が刊行され続けています。
代表作『
リバースエッジ 大川端探偵社』は、東京浅草の隅田川沿いを舞台にした探偵社の事件簿です。所長、調査員村木、受付嬢メグミの三人が、日々の調査を通じてそれぞれのやり方で問題解決に当たります。2007年から2022年にかけて読み切りシリーズとして連載され、テレビドラマ化もされた人気作。『
湯けむりスナイパー』シリーズは、温泉地を舞台にした連続シリーズで、複数のパートに分かれています。『
ネオ・ボーダー』も連載中の作品です。狩撫の作風は、都市の日常に潜む事件や謎を、硬質で冷徹なハードボイルド的視点から描くことが特徴。登場人物たちの個性とそれぞれの解決方法が織り交ざり、深い人間味が感じられます。
入門には『
リバースエッジ 大川端探偵社』がお勧めです。読み切りシリーズながら登場人物との絆が深まり、独立した事件でありながらも全体として一つの世界観が構築されています。日本文芸社の『週刊漫画ゴラク』での連載作を単行本化したもので、全11巻が刊行されています。原作者の逝去後、残されたストックを活用して連載が再開・完結したため、完全な形で作品を読むことができます。テレビドラマ版と比較しながら読むのも興味深いでしょう。ハードボイルドな世界観が好きな読者や、都市冒険譚を好む方に特に向いています。シリーズの多い『
湯けむりスナイパー』も、同じ原作者による異なる作風を知る良い機会になります。