福岡県久留米市出身。1989年、デビュー作『後宮小説』で第1回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、鮮烈なデビューを果たしました。同作は王朝も人物も架空という異色の中国史ファンタジーでしたが、その後は実在の中国史に題材を求める作品が増えていきます。東洋哲学を専攻した学背景を活かし、中国の歴史的事実を基盤としながらも、奔放な想像力で人物や事件を描き直す手法が特徴です。小説にとどまらず、漫画化やアニメ化、映画化など、幅広い分野から注目されました。2023年11月に59歳で逝去。
代表作『
墨攻』は、戦国時代の中国を舞台に、墨家の教団員たちが戦乱の中で「平和」と「非攻」の思想を実践する冒険活劇です。直木賞候補となり、中島敦記念賞を受賞。「墨守」という古典表現を創造的に転じたタイトルは、酒見の造語力を象徴しています。『
泣き虫弱虫諸葛孔明』は、三国志の軍師・諸葛孔明を弱虫として再解釈し、その葛藤と成長を描く作品。酒見の作品に共通するのは、史実や古典に登場する人物の内面を掘り下げ、新たな視点から歴史を読み直す姿勢です。知識と情感のバランスが取れた、読みごたえのある作風が定評があります。
『
墨攻』は最も知名度が高く、入門作として最適です。新潮文庫版(1994年刊)と文春文庫版(2014年刊)の両方が流通しており、入手しやすくなっています。『
泣き虫弱虫諸葛孔明』は、より人物に密着した物語を求める読者向けです。酒見の作品は歴史冒険小説としての娯楽性と、思想的な深さを両立させているため、歴史に興味がない読者でも物語の面白さで引き込まれます。初めての作家の場合、まず『
墨攻』で世界観を感じ、その後で他作品へ進むことをお勧めします。